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シニアの終活 家族信託とは?メリット・デメリットを紹介

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高齢期になると病気、ケガ、認知症などのリスクがあります。生涯の生活費や財産を守るために財産の管理や運用を子供に任せる家族信託が注目されています。特に50代、60代は親の認知症に備えて、財産管理を受け継ぐ家族信託の利用を検討する方が増えているのです。

この記事ではシニアの終活として知っておきたい、家族信託とは何か、メリットやデメリットと合わせてご紹介します。

家族信託とは?

家族信託は、何らかの理由で自身の財産管理ができなくなった際に、家族などへ財産管理や処分の権限を与える信託です。

財産管理の運用を任せる投資信託が有名ですが、家族信託はあくまで家族に財産管理を任せることが特徴です。

家族信託は親が委託者として、子の受託者に「財産を託すため管理と運用を任せる」という契約です。そして、財産の利益を得る人が受益者という関係性です。

(例)

  • 委託者…財産を託す親
  • 受託者…財産の管理・運営・売却を行う権利を持つ子
  • 受益者…財産の利益を得る人

子は財産管理の報酬は発生せず、信託された委託者自身が財産の受益者になる、つまり親が財産や遺産を受け取る形式が基本。将来的に親が亡くなった後、そのまま受託者である子が、受益者となって財産の利益を得るように契約する形が多いです。

高齢化社会と平均寿命の長寿化の影響により、近年家族信託が注目されています。

認知症の対策として、財産を管理してもらう方法に成年後見制度がありますが、家族信託は後見制度ではカバーしきれない部分を補えるシステムです。

家族信託のメリット

家族信託のメリットは、次のようにさまざまなポイントがあります。

認知症に備えられる

家族信託は親が持っている財産について、管理運用、売却する権利と、財産から利益を得る権利に分けて、管理、運用、売却の権利のみを子供に渡せる契約方法です。
そのため、万が一親が認知症になった際でも、子が責任を持って管理、運用、処分ができるのです。

財産を持っている親に認知症の症状が出始めており、財産をなくしたりとられたりしないか心配。
といったお悩みに対して、子供が財産を管理して、親が毎月生活費を受け取るといった形ができるため、安全です。

財産の継承に安心感をもてる

家族信託は親の財産の管理を子に継承することで、遺言書のような役割を果たします。家族信託は指定した受益者が亡くなった場合、次の受益者を誰にするか指定できます。

つまり、親が亡くなった後に最初に受益者となる子、その次に受益者となる権利を与える子をあらかじめ指定しており、万が一亡くなった場合でも、受益者として指定した子が財産による利益を得るのです。

生前のうちから遺言書のような厳格な形の効力を持っているのも家族信託の魅力です。

後見制度より柔軟な財産の取り決めができる

成年後見制度と比較して、柔軟な財産の管理について取り決められるところも家族信託の特徴です。成年後見制度は、損失を出すような投資について原則実行ができません。

しかし、家族信託は子に管理を任せるため、財産をどう活用するのか、子供が運用できるのです。つまり、親が生前のうちから、経営の投資にも子が深く関わっていけるため、成年後見制度とは異なる自由度があります。しかし、成年後見制度でなければできないこともあります。

それは成年後見制度であれば財産管理だけでなく、身上監護も含まれること。身上監護は、生活維持のための仕事や、監護、療養に関する法律行為で、被後見人の施設の入退所、治療、入院といった手続きが可能になります。

あくまでも家族信託は、子が親の財産の管理、運営などができるもので、生活にまつわる身上監護については契約できないため、家族信託と後見制度の両方の活用が便利です。

家族信託の注意点

家族信託はメリットがたくさんありますが、注意したい点も複数あります。家族信託をするべきかどうか、現在の環境や家族の同意など、じっくりと検討していきましょう。

受託者を引き受ける人がいない可能性

家族信託の受託者がなければ、信託そのものができません。家族信託は、固定資産税の納税通知書が受託者に届けられるほか、建物の管理義務も発生します。

そのため、財産があっても信託による諸々の手続きや管理、トラブルへの対策、賠償のリスクから、受託者になる子がいないという可能性があるのです。また、おひとりさまやおふたりさま(お子様のいないご夫婦)は、受託者がいないケースがほとんどです。

受託者には相応の責任が伴うことを把握したうえで、安全に任せられるのか判断することが重要です。

取り扱えない不動産がある

家族信託は建物などの管理も任せられますが、田んぼ、畑は信託の対象外です。これは農作物を育てるための土地として、特別なルールのもと作られており、一般的な土地、不動産とは異なる場所であるためです。

農地の信託は、農業協同組合、もしくは農地保有合理化法人による引き受けのみが可能であり、原則として子は信託できません。

節税対策にはならない

家族信託は、あくまで親が所有している財産の管理や運営、売却の権利が与えられるだけで、生前贈与ではありません。

そのため、贈与税の節税対策にはならないため注意しましょう。

不動産の名義はいったん子に変わるものの、あくまで受益権は親にあるため利益は親の元に残るのです。
もし相続が発生した際は、家族信託をしている場合でも、改めて相続税が発生します。

まとめ

家族信託は、親の財産を子が守るための信託システムです。しかし、金銭や財産の管理ができても、万能ではありません。

ほかの制度と組み合わせるなどして、家族信託だけでは補いきれないトラブルを回避する工夫をすることをおすすめします。特にシニア世代の親がいる方は、将来に備えて家族信託を検討してみてはいかがでしょうか。

投稿者プロフィール

土屋福美子
土屋福美子
一般社団法人 包括あんしん協会理事
株式会社 WISHLANE 取締役

【資格】
ファイナンシャルプランナー
終活アドバイザー
高齢者住まいアドバイザー
デジタル遺品アドバイザー

お金だけでは解決できない想いを叶え、生きた証を後世へ橋渡しするためのあなた人生のスパイスとして一生涯サポートしています。

約5000人の保険コンサルティング実務経験から
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