終活にまつわるお墓のお悩みについて。
とある雑誌が実施したアンケートによると「自分が死んだ後、夫と同じお墓には入りたくない」と回答した方が回答者のうち半数近くにのぼったということもありました。
この回答には、切実にお悩みの方もいれば、「そう言っても結局は同じお墓に入るつもりだけど心情的には嫌だな〜」とその場の感情で回答した方も含まれるとは思いますが、”結婚したら死ぬまで添い遂げた後、嫁は旦那側のお墓に入るのが当たり前”と、ひと昔前までの通説が徐々に和らいで、熟年離婚を含めて選択肢が増えたからこそ浮かび上がってきた問題とも窺えます。
実家のお墓への納骨を明言した方の例
有名な方を例にあげると、2021年に無くなった脚本家の橋田壽賀子さんも生前から「自分は夫と同じ墓には入らず、自身の実家の墓に入る」と明言されていた方の一人。実際にご主人方のお墓がある静岡県ではなく、実家の愛媛県今治市にあるお寺で納骨が行われたと報道されています。
橋田壽賀子さんの場合は、姑と生前からトラブルが絶えず「生前から姑に”寿賀子はうちの墓には入れない”と宣言されていたから」「死後の世界でまた姑や一族の人間に虐められたくなかったから渡りに船」と言って、ご主人と同じ墓であることを拒絶したと言うよりも、義理の一族との関係を絶ちたくて、実家のお墓に入ることを選択したと生前に明言されています。
少し古い数字になりますが、2014年に第一生命経済研究所が60歳〜79歳までの男女(配偶者あり)に対して実施した調査結果によると、「夫婦は同じ墓に入るべきか」との問いに対して、
「そう思う(同じ墓に入るべきと思う)」と回答したのは、
男性が62.2%
女性が47.3%
と、男女で回答結果に大きな乖離が見られました。
「必ず同じ墓に入るべきとは思わない」と答えた女性は23.1%で、
女性の約4人に1人が必ず同じ墓に入るべきとは考えていないことがわかります。
苗字が違っても実家のお墓に入れるのか?
橋田壽賀子さんの例を見てもわかるとおり、結婚によって苗字が変わっていても実家のお墓に納骨してもらうことは可能です。ただしこの場合、実家のお墓の承継者と生前から合意形成しておくことが大切です。
①墓地の使用権利者(承継者)との相談を
お墓には「墓地の使用権」を継ぐ”承継者”が決められていて、相続の際には墓地の名義人も届出によって変更されています。そして、墓地の使用権利者が使用権を持つ墓地にお墓を立てて所有する流れとなっているのです。
よって、埋葬の際には、この「墓地の使用権」を持つ墓地管理者の承諾を得る必要があるということです。
②墓地ごとに利用規定が定められている場合も
また、墓地によっては納骨できる人の範囲が墓地の利用規約で定められている場合もございます。
一般的な墓地の利用規約としては、
下記のようなものが挙げられます。
墓地の利用規約の例
・永代使用権者の家族
・永代使用権者◯◯親等以内の親族
・永代使用権者と苗字が同じ親族
・檀信徒(寺院墓地の場合)
また平成12年に厚生労働省から発行された「墓地使用に関する標準契約約款」には、墓地を利用できるのは「使用権者の親族及び縁故者」と記載されています。
よって「嫁いだので苗字が異なる人が実家の墓地には入れない」と全国共通のルールがあるわけではありませんが、自分が実家のお墓に入れるかどうかは、予め墓地の承継者に相談の上、(利用規約が定められている場合は)契約書を参照して、確認しておきましょう。
近年需要が高まる女性専用墓地
「死後は配偶者の墓に入りたくない」という方や離婚率、生涯未婚率の上昇に伴い、近年では「女性専用墓地」の需要も高まっています。
埼玉県比企郡の妙光寺にも女性向けの「共同墓なでしこ」が設置されていて、生前から受付が行われています。
こういった共同墓は承継者の登録が不要な永代供養墓の形が取られている場合が多く、
・独身のため墓守を任せる後継者がいない
・子どもはいるが墓の世話の負担を掛けたくない
と、配偶者の有無に関わらず希望者が見学に来られるそうです。
配偶者や後継者と生前に決めておきましょう
家制度が強固だった時代には考えられなかった、夫婦で別々のお墓に入るという選択肢。また、生涯独身や熟年離婚、さらに死後離婚のように選択肢が増えてきた時代だからこそ「実家のお墓に入りたい」「自分だけで永代供養の新しいお墓に入りたい」といったニーズが浮かび上がってきたと言えるでしょう。
女性専用墓地であれば、女性同士でパートナー関係にあるカップルも同じお墓に入ることが叶うといった特徴もございます。
夫婦の一方だけが「同じ墓に入って当然」と考えて意見が食い違っていると、夫婦のどちらかが死去した時、配偶者だけでなく後継者まで混乱に巻き込まれてしまうことも。
夫婦ならびに子どもや近しい親族など(いらっしゃる場合は)後継者を交えて、生前に話し合っておきたい終活の話題の一つでした。
このような問題は「言った、言わない」とトラブルになるケースもしばしば。確実な方法としては遺言書に明記しておくことですが、エンディングノートに希望を記すだけでも、この件に関する記述がある無しで残された方の物事の進めやすさが大きく変わります。”こうすることが当たり前”といった社会的通念が多様な時代だからこそ、生前に自身の希望を整理して、文字で記しておきたいテーマの一つですね。
投稿者プロフィール
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一般社団法人 包括あんしん協会理事
株式会社 WISHLANE 取締役
【資格】
ファイナンシャルプランナー
終活アドバイザー
高齢者住まいアドバイザー
デジタル遺品アドバイザー
お金だけでは解決できない想いを叶え、生きた証を後世へ橋渡しするためのあなた人生のスパイスとして一生涯サポートしています。
約5000人の保険コンサルティング実務経験から
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