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大切なペットに 遺産を遺すことはできる? 〜50代からの終活〜

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種類を犬と猫に限っても、今や人口の約2割弱の人たちがペットを飼って生活していると言われる時代です。
自身に何かあった時のために「自分がいなくなった後も、うちの猫が幸せに暮らせるように、ペットのためにお金を残してあげたい」と懸念される飼い主さんは少なくありません。

この「大切なペットに遺産を遺してあげることはできるのか?」という心配事ですが、
まず結論からお伝えすると、

・ペットに直接、遺産相続することは不可能
・世話を引き継ぐ人にお金を遺すことはできる

といった状況で、やはり人間同士で交わされる相続の契約相手にペットを直接、指定することはできません。
ここでペットにお金を遺してあげる方法として用いられるのが「信託」や「遺言による負担付遺贈」の仕組みです。

ペットに関する相続で用いられる信託や負担付遺贈について、順番に説明していきますね。

①ペットにお金を遺してあげる「信託」

そもそも「信託」とは

信託とは「大切な財産を信頼する人に託し、大切な人あるいは自分のために、管理・運用してもらう制度」を言います。相続と異なる点は、生前から効力を発揮する点で、財産の一部を専門機関に任せて、投資信託の形で財産の運用を早くから任せている資産運用などは顕著な例でしょう。

ペットのために「信託」の制度を利用するメリット

ペットにお金を遺してあげる方法の一つがこちらの「信託」の仕組みを使うことです。遺言の場合は、財産の持ち主の死後にしか効力を発揮しませんが、信託制度を選択することで、「自身に介護が必要になったら」「自身の判断能力が衰え、ペットの世話が困難になったら」などと、条件を付けた状態で、生前からペットのお世話を指定した人に任せることが可能となります。

このように条件が付けられる特徴から見ても、自分がペットのお世話をできなくなった時点で、自分の決めた人に責任を託す方法として最も現実的な選択肢の一つと言えるでしょう。

「信託」の制度を利用した時の懸念点

ペットにまつわる終活の一貫で信託を活用するメリット(安心)がある一方で、デメリットとしては「ペットのために託したお金がその通りに使われない場合もある」という点が挙げられます。

悪徳な例をあげると「信託金欲しさに、既に亡くなってしまったペットを生きているように偽装していた」といったケースも報告されており、どの業界においても共通する課題ですが、ペット信託のサービスを提供している受託者が”信用に足る業者ばかりとは限らない”といったところが懸念点であり、分かれ道になるところです。

 

信頼できる受託者と出会うために

 

信頼できる人にペットのお世話を任せるためには、予め信頼関係の構築できている方を受託者として、ペットのお世話を任せることが、より安心に繋がる選択肢の一つと言えるでしょう。

また、「信託契約の受託者」と「実際にペットをお世話する人」は必ずしも同一人物でなくても構いません。責任を持ってペットのお世話をしてくれる新たな飼い主を探して、受託者が「将来の飼い主」にお世話を依頼するケースもございます。

さらに、信託の制度を利用する場合には「受託者」を監督する目的で「信託監督人」を指定することができます。

信託管理人は、

・信託された財産が適切に管理されているか
・ペットの飼育状況など
・信託契約の内容を守ってくれているかどうか

といった内容について監督する権利を有します。

信託監督人を指定する場合、この信託監督人にも委託費用が発生するため、実際のところは監督人まで依頼している人は少数な現状もあるようですが、監督人を指定することも「確実にペットのお世話をしてもらうための信託契約」のあり方の一つとお考えください。

 

「負担付贈与」や「負担付死因贈与」という方法も

飼い主の生前から効力を発揮する信託とは別に、遺言を残すことで死後に第三者へ「ペットのために使ってもらうお金」を渡す方法もございます。

遺言による負担付贈与とは

まず遺言による負担付贈与とは、受贈者に一定の債務を負担させることを条件にした財産の贈与をいいます。
そのため、この場合は「自身の死後にペットのお世話を依頼すること」を条件に、財産を贈与するという形ですね。

この場合は、生前にペットの新しい飼い主を決めておき、遺言の内容に「誰にどのような内容を依頼するか」「どのような財産を遺贈するか」を明記しておかなければなりません。

また、遺言による遺贈は、一方的に遺言書を残すだけでできるものですが、受贈者(財産を受け取る相手)がその権利を放棄することもできる制度です。よって、財産を受け取ることを拒否すると同時に、ペットの飼育を拒否することも可能な制度であるということです。

 

負担付死因贈与

 

こちらは負担付遺贈と名前がよく似た制度ですが、性質が異なる贈与の仕組みで「何かをしてもらう代わりに、自分が亡くなった後は、財産を贈与する」といった契約を指す贈与となります。

この場合は「生前にペットの面倒を見てもらう代わりに、財産を贈与する」といった内容になり、生前のお世話をカバーしてもらえる点が前述の「負担付贈与」とは異なります。

ただし最大の懸念は、自身がこの世を去った時に効力が無くなってしまうこと。死後のペットのお世話についても遺言によって取り決めを行い、負担付贈与と組み合わせることで、カバーできる可能性もありますが、受け取り側が贈与を放棄することで、ペットのお世話を拒否できる点は変わりません。

 

自身の死後、ペットの暮らしを保証してもらうために

 

ペットに直接お金を渡す制度はありませんが、第三者へお金を託すことで自身の死後にペットのお世話を依頼することができる制度についてご紹介いたしました。

利用できる信託や贈与の制度それぞれのメリット・デメリットについて、ご理解いただけましたか?

やはりどの制度にもデメリットは付きもので、最終的には「信頼してお世話を託せる相手に出会えるか否か」がペットの暮らしを保証してもらう上での分かれ目となるところです。

個人に依頼する他、最近では「生前にペットと共に入居できて、飼い主の死後もペットの世話をしてくれる介護付老人ホーム」のようなサービスも出来始めています。また老犬や老猫のホームがあることも、動物好きの方ならご存知のことと思います。

 

・運営者に動物への愛や熱意があるか
・病気や怪我になった場合の費用についても十分に説明があるか
・預けた後も面談が可能な施設か(運営に透明性があるか)
・生涯の飼育費用が極端に安い、お得性ばかり強調する施設団体でないか

例えばこのような点に注意しながら、
大切なペットが生涯安心して暮らせる環境を準備しておくことが、動物を飼っている方の終活の責任ですね。

投稿者プロフィール

大和泰子
大和泰子
一般社団法人 包括あんしん協会代表理事
株式会社 WishLane 代表取締役

【資格】
終活アドバイザー
CFP®(ファイナンシャルプランナー)
デジタル遺品アドバイザー®
高齢者住まいアドバイザー

家族に恵まれなかった幼少時代の不安と孤独を突破し、今は3世代同居でにぎやかに生活中。
一生涯のライフプランをサポートする中、独りで誰にも看取られず亡くなる顧客を何人か見送った時、幼少の頃の孤独と重なり「孤独で苦しむ人を減らしたい」と思ったのがきっかけで、おひとり様サポートを行う「一般社団法人包括あんしん協会」を設立。
5000人の保険コンサルティングの実務経験から、保険の「資金準備」だけでは足りないと実感。「お金」「心・身体」「人」のトータルサポートを目指している。実際におひとり様が病気や介護になった時、また死亡時のサポート業務を行なっている。おひとり様の終活準備の必要性を啓もうする為セミナー講師としても活躍中。
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