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定年後に家を借りるときの注意点〜50代からの終活〜

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シニアライフへの備えに役立つ情報をお届けしているコラムシリーズですが、今回は老後の大きな悩みの一つと言われる「シニアになると賃貸を借りられない問題」についてご紹介します。本来、ライフステージに応じて住みやすい家の在り方とは変化するものです。しかし、決まった収入がなくなる場合が多い定年後はスムーズに賃貸を借りにくくなるといったお悩みも少なくありません。

 

老後の暮らしに備えを作ることができる50代の間から、老後に家を借りる時の懸念と対策について知識を蓄えておきましょう。

 

賃貸での老後生を選ぶ方の主なケース

1)自宅を購入していないから

平成25年の土地統計調査による資料の結果では、東京都内の65歳以上の世帯員がいる家庭の約3割の方が賃貸で暮らしているといった状況が報告されています。つまり、老後も賃貸で生活をおくる方は決して少なくないということが分かります。

そして、賃貸での老後生活を選ぶ方の主なケースとして、まずは「自宅を購入していない」といった理由があることでしょう。
金銭的な事情の他にも、おひとり様で暮らしてきたから「自宅を建てるほど広いスペースが必要なかったから」といった理由、
現役時代は転勤生活が中心だったため、決まった自宅を建てる状況になかったなど、理由は様々に挙げられます。

2)自宅を売却する事情ができたから

元々は一軒家の自宅やマンションの一室を所有していたものの「ライフステージに応じて売却した」というケースもございます。
例えば「子どもたちが独り立ちして、広い一軒家は不要になったから」「定年退職を機に故郷へUターンしたいので、持っていた都市部のマンションは手放した」など、シニアライフへ突入する前に「家仕舞い」を検討されるケースは珍しいことではありません。

3)老後生活に沿った立地へ引っ越したいから

シニアライフでは、住環境で優先すべき条件が会社員として働いていた時代とは異なります。

通勤や子育てのための条件を優先していた立地から、
「車が無くても生活に必要な用事を済ませられる」「大きな病院が近くにある」など、
身体の老化現象に寄り添いながら、自立して老後生活を送ることが出来る土地へ引っ越されるケースもございます。

よって、元々持っていた自宅を売却して賃貸を探す方もあれば、今まで借りていた賃貸の部屋を解約して、
老後暮らしに良い場所で新たに賃貸を借りる方もおられます。

老後に家を借りるときの懸念事項

前述のとおり、シニアライフに突入してから新たに賃貸を借りるケースは決して珍しいケースとは限りません。
しかしながら、決まった収入のある現役時代と比べて、シニアライフでは賃貸契約を結ぶことが難しいと叫ばれる声が目立ちます。

その背景には、以下のような理由が影響しているのです。

1)連帯保証人が見つからない

年金の他に決まった収入がない場合が多いシニア世帯の場合、賃貸契約を結ぶ時に「連帯保証人のサイン」が求められる場合が大半です。
しかしながら、連帯保証人が必要になった時に「頼める知人がいない問題」が少なくないというのです。

近くに頼める子どもや親族がいない、親族が皆高齢になっていて連帯保証人の条件に該当しないなど、
連帯保証人が見つからず賃貸契約の締結にたどり着けない問題が顕著となっています。

2)家主から敬遠されてしまう

さらに年齢にもよりますが、特におひとり様シニア世代が賃貸を借りようとした時に、
残念ながら家主から敬遠されてしまうケースもございます。

孤独死や認知症トラブルのリスクがあるので、高齢者へ積極的に貸したくない」といった本音が挙げられるところです。
一方で「終の棲家として長く借りてくれる」などと、高齢の方へ部屋を貸すことを肯定的に捉える家主さんもいらっしゃるので、
場合によるというのが実際のところですが、そのような理解のある家主さんを探すことが至難の業といったところです。

また、理解のある家主さんと出会えたとしても、実際の契約手続きを行う不動産管理会社から断れてしまう現実があるということを念頭に置いて、対策を整えておきましょう。

 

老後でも安心して賃貸を借りるための方法と備え

1)家賃債務補償制度を利用する

定年後のシニアライフでは、新たに賃貸を借り辛くなる傾向についてお話してきましたが、
日本の高齢社会は加速する一方、さらにおひとり様世帯で老後を迎える方の割合も年々増加しています。

よって、賃貸住宅の入居者に占める、高齢者の比率も確実に増加していくことが見込まれています。
このため、賃貸オーナーの方々も無縁ではない問題として「おひとり様高齢者の入居への備え」を検討しています。

また、公的な制度の整備も進んでおり、平成13年からは「高齢者の居住の安定確保に関する法律」が見直されました。
この法律の見直しに伴い、高齢者住宅財団が連帯保証人の役割を担うことで、
高齢者世帯が賃貸住宅へ入居することの支援が行われることとなりました。

シニア世帯で見れば60歳以上の方、または要介護や要支援認定を受けている60歳未満の方が
家賃債務保証制度の対象となり(他に子育て世帯や外国人世帯を対象とした条件もあり)、
契約時に保険料を支払うことで連帯保証人が見つからない場合でも家賃債務を保証してもらうことが可能となります。

但し、家賃債務保証契約締結の際に「緊急連絡先」の記入が必要となり、こちらが準備できないことで契約を断られるケースもございます。

緊急連絡先に記入された人は、賃借人(実際にお部屋を借りて住んでいる人)の急病や死亡時の対応が求められることとなります。よって、緊急連絡先の引受けとは責任の重い役割であり、気軽に引き受けてもらうことが困難な存在だからです。

なお、当協会では身元引受や緊急連絡先の引受けも行っておりますので該当する事情でお悩みの際にはお問合せくださいませ。
また、緊急連絡先等の登録を引受けてもらえる団体や法人を近隣で探して依頼する方法もございます。

 

2)高齢者向け賃貸住宅を検討する

上記のような制度を利用することで一般の賃貸住宅を契約する方法もあれば、
元から「高齢者向け」と謳われている賃貸住宅に的を絞って入居を検討する方法もございます。

高齢者向け住宅とは、

有料老人ホーム、安否確認がついたサービス付き高齢者住宅、60歳以上の高齢者に該当するものの未だ介護を必要としない方たちが
安心して暮らせるよう配慮して設計されたシニア専用の賃貸マンションを指します。

シニア専用の賃貸マンションは、賃貸契約のため有料老人ホームよりも安価で入居できる一方で、バリアフリー等の配慮があり、
物件によっては生活サポート等の付帯サービスが用意されている場合もございます。

例えば定期訪問や病院との提携、緊急駆付けサービス等の体制が付帯しているアパートもあり、
「頼れる親族がいない」「子どもに頼らず可能な限り自立して生活したい」といったシニアの方からも選ばれています。

高齢者向けの賃貸住宅であれば、シニア世帯が契約することに関しても肯定的な場合が多く、
一般的な賃貸オーナーと契約を進めるよりもスムーズな場合が多いと言われています。

 

シニアライフの住まい準備はお早めに

「終の棲家は、定年退職してからゆっくり探そう」と考えておられる方は、場合によっては注意が必要です。
今回ご紹介したような理由によって、シニアライフでは新たに賃貸住宅を借りることが非常に難しくなる場合があるからです。

「こんな場所へ引っ越してシニアライフをおくりたい」と具体的なイメージがある方、
今借りている賃貸住宅からの住替え予定がある方は、お早めにシニアライフの住まい準備を進めておきましょう。

また、保証人等に困った際には、市町村の公的な団体のサポートの有無を確認しておいたり、
近くの高齢者支援団体について予め調べておくと良いでしょう。

借りたい時に住まいを借りられるための準備」は、理想のライフプランを描きながら、
お金の備えと共に進めていきましょう。

投稿者プロフィール

大和泰子
大和泰子
一般社団法人 包括あんしん協会代表理事
株式会社 WishLane 代表取締役

【資格】
終活アドバイザー
CFP®(ファイナンシャルプランナー)
デジタル遺品アドバイザー®
高齢者住まいアドバイザー

家族に恵まれなかった幼少時代の不安と孤独を突破し、今は3世代同居でにぎやかに生活中。
一生涯のライフプランをサポートする中、独りで誰にも看取られず亡くなる顧客を何人か見送った時、幼少の頃の孤独と重なり「孤独で苦しむ人を減らしたい」と思ったのがきっかけで、おひとり様サポートを行う「一般社団法人包括あんしん協会」を設立。
5000人の保険コンサルティングの実務経験から、保険の「資金準備」だけでは足りないと実感。「お金」「心・身体」「人」のトータルサポートを目指している。実際におひとり様が病気や介護になった時、また死亡時のサポート業務を行なっている。おひとり様の終活準備の必要性を啓もうする為セミナー講師としても活躍中。
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