残りの人生を豊かに生きるために行う終活に当たって、たびたび話題に上がる離婚のお話。ご存知のとおり日本では「3組に1組の夫婦が離婚する」というくらいですから、配偶者がいる方にとっての離婚問題は、縁遠いものではありません。
令和3年の件数で見てみると、
年間婚姻件数は501,116 組
年間離婚件数は184,386組
離婚件数を婚姻件数で割ると36.8%となり、およそ3組に1組の夫婦が離婚に至っている割合となっています。(令和3年人口動態統計月報年計の概況より)
熟年離婚の割合は?
明確な定義があるわけではありませんが、一般的な傾向として婚姻期間20年以上の夫婦が離婚することは「熟年離婚」と呼ばれています。
そして、先ほどご紹介した令和3年時点での離婚に関する調査結果によると、
熟年離婚に着目した場合はその割合が21.1%。
同じ内容の調査について過去の結果を遡ってみると、
昭和60年での熟年離婚の割合は12.3%
平成17年には熟年離婚の割合は15.4%
令和3年には熟年離婚の割合は21.1%
と、婚姻件数に対して熟年離婚の割合は増加傾向にあるようです。
熟年離婚が増加してきた背景は?
離婚問題を専門に扱う専門家(弁護士)の見解をまとめると、熟年離婚が選ばれる比率が増えてきた要因として、下記のような例が挙げられています。
①収入基盤を持てる女性が増えてきた
こちらは、もっとも想像しやすい要因の一つではないでしょうか。女性は専業主婦の選択しかなく、社会に出て働くことがほとんど認められていなかった時代と比べて、仕事を持って働く女性の割合は確実に増えています。
②離婚時年金分割制度の導入(平成20年〜)
また平成20年度からは「離婚時年金分割制度」が認められ、婚姻期間中に夫名義で納めていた厚生年金が夫婦の共有財産として扱われるようになりました。よって、離婚の際に婚姻期間中に納めた厚生年金の記録が分割される制度となりました。よって、長年専業主婦として家庭に入っていた女性も、年金分割の制度を利用すれば年金額が一定額増えるため、お金の面で離婚を躊躇していた方が”熟年離婚”の選択肢を選びやすくなったとも言えるでしょう。
②高齢化やコロナ禍の潮流
高齢化する寿命の傾向を前に「人生100年時代」という言葉も広く浸透して、ライフプランに対する考え方は大きく変化しています。
”仕事を引退した後の生活”の年月は明らかに長くなり、また核家族化によって家族の在り方も変化して”夫婦2人で暮らす時間”が伸長する潮流を前に「この夫婦で日々ずっと暮らし続けるのは難しい」と定年後のライフスタイルを考え直す方が増えていることも、よく挙げられる熟年離婚のきっかけでしょう。
また近年のコロナ禍をきっかけに、リモートワークが普及したり、飲み会など外での人付き合いの習慣が途絶え、以後すっかり自宅で過ごす時間が増えたというご夫婦も。
そして夫婦2人きりで自宅で過ごす時間が増え、今までと生活様式が大きく変わったことが離婚の引き金となって相談に訪れるご夫婦も、弁護士さんの肌感覚として増えていると言います。
前向きな解散のために、知っておきたい離婚について
「残された人生の時間を豊かに暮らすために」と終活へ前向きな気持ちで取り組むことと同様に、離婚に対してもポジティブな気持ちで受け入れる価値観が普及しつつあります。
そんな価値観の変化を表すように、ウエディングプランナーならぬ「離婚式プランナー」との肩書きを掲げた新たな職業も誕生しているほど。「結婚した事実を後悔せず前向きに解散したい」「未練を断ち切りたい」「友人や親族への報告など穏やかに進めるアドバイスが欲しい」など、離婚式アドバイザーに相談を寄せる背景はさまざまなようですが、離婚を忌み嫌うような価値観が薄れていることを表すエピソードではないでしょうか。
離婚に至る4つの方法を知っておこう
さて、前置きの話題が長くなりましたが、いざ自分ごととして離婚を考えた時、婚姻期間が長くなればなるほど複雑に絡み合った問題が多く「何から始めたら良いか分からない」と呆然としてしまう方も多いことでしょう。
まずは基本的な内容として、離婚に至る4つの方法を把握しておきましょう。
①夫婦2人で話し合う、協議離婚
こちらは家庭裁判所の助けを借りず、夫婦間で話し合いを行い遂行される離婚の方法です。
・夫婦双方が同意して離婚届に署名すること
・保証人を2人立てること
この2つの条件さえ満たすことができれば達成できる離婚の方法で、専門家を雇うこともなく届出を提出するだけで出来るためもっとも経済的な方法ではありますが、素人の当事者二人が口約束で離婚してしまうことで後々トラブルに発展する可能性も高くなってしまいますよね。
協議離婚を選択する場合は
・金銭的な決まり事について公正証書を作成しておく
・といっても当事者の話し合いだけで解決する協議離婚がスムーズに進むケースは”かなりレア”で”危険度が高め”
離婚経験者や専門家はこのように語ります。
②調停離婚
離婚に関する様々な問題について、家庭裁判所を介して話し合いを行うことを調停離婚と言います。
離婚の当事者は財産分与、慰謝料、年金分割、子どもがいる場合は親権や養育費、面会交流などについて双方の意見を主張します。
そして双方の間に裁判所(調停委員会)が仲介することで当事者が互いに条件を譲歩しあい、落とし所を見つけて合意による解決を目指す手続きです。
ただし調停離婚に際して間に立つ調停委員会は、法的な争点についての決定権を持ちません。よって、家庭裁判所を通した話し合いでも合意がまとまらない場合、この調停は不成立に終わります。
・家庭裁判所で仲介人を交えて話し合いを行う方法
・家庭裁判所が落とし所の決断を下すことはない。場合によっては調停不成立になり得る。
・原則として本人が調停に出席することになる
(後述の裁判離婚と大きく異なる点)
といった特徴が挙げられます。
③審判離婚
・調停離婚で合意形成できなかった
・なおかつ残り少しで決着がつきそうなとき
このような状態の時に「裁判所の判断で離婚を成立させること」を審判離婚と言います。
調停に関わる審判(裁判官)が判断を下して、言わば「裁判官が話し合いの落とし所を提案する」ようなもの。
しかし、審判の内容に強制力はないため、当事者は一定の期間内に書面で異議を申し立てることが可能です。つまりどちらかが拒否すれば、離婚は成立しないということ。
双方が審判の内容に合意すれば離婚が成立しますが、ここまで膠着したところから審判によって離婚が成立するケースは極めてレアとも言われます。
④裁判離婚
ここまでの流れから推測しても、4つ目の選択肢「裁判離婚」が最終手段のような位置付けであるとご想像いただけるのではないでしょうか。
家庭裁判所で調停をしても、離婚条件について合意形成が図れず不成立になった時、それでもどうしても離婚を成立させたい場合に「裁判離婚」の方法が採用されます。
・手続きの進行は裁判官が行う(調停離婚の際は調停委員会が進行)
・裁判官による判決によって最終的な解決が示される
・尋問などを除き、弁護士のみが出席する
(調停の場合は当事者の出席が原則として求められる)
・裁判の内容は記録、公開される(調停の場合は密室で非公開に行われる)
また、ここまで調停で話し合いを進めていた場合にあっても、裁判離婚となれば一からのスタートとなるため、さらに離婚に掛かる期間が延長し、費用が嵩むケースが多いところです。
ご自身の状況にあった離婚の進め方を
以上、離婚に関する潮流に加えて、離婚に至る4つの方法についてご紹介してまいりました。
もし終活の一環で離婚を視野に入れている場合、4つの離婚の特徴についてご理解の上、自分たちの状況にあった方法はどの進め方になりそうか考えてみてくださいね。
50代から考える終活の一環として、この記事がお役に立てば幸いです。
参考書籍
今回の内容をご紹介するにあたって、こちらの本を参考にしています。
Kindleのunlimited(月額の定額サービス)でも読めますので、著者の体験談とともに詳しく知りたい方は、参考にしてみてくださいね。
参考書籍:アラフィフから離婚してもお金に困らないために 知っておくべき 3つのこと (鳴海出版)
投稿者プロフィール
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一般社団法人 包括あんしん協会理事
株式会社 WISHLANE 取締役
【資格】
ファイナンシャルプランナー
終活アドバイザー
高齢者住まいアドバイザー
デジタル遺品アドバイザー
お金だけでは解決できない想いを叶え、生きた証を後世へ橋渡しするためのあなた人生のスパイスとして一生涯サポートしています。
約5000人の保険コンサルティング実務経験から
「お金、心、身体」のトータルサポートが必然。
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