日本では亡くなった方を火葬する慣習が浸透しています。しかし、実は江戸時代まで土葬をする文化も広まっており、浄土宗や浄土真宗の普及により、昭和時代にはほとんどが火葬になりました。
それでは、現在の日本国内では土葬をすることは不可能なのでしょうか?この記事では、日本で土葬をすることが可能なのか、土葬を選ぶ理由や土葬を希望する際の注意点などを解説します。
土葬とは?
土葬とはご遺体を棺桶に入れた状態で、土の中へと埋葬する方法のことです。棺桶をおさめるための広い墓地が必要で、しっかりと埋葬するには2メートル以上穴を掘って周囲の衛生に影響を与えないように配慮する必要性があります。
そもそも日本では、縄文時代から体を折り曲げた状態で埋葬する「屈葬(くっそう)」が定番でした。実は火葬がはじまったのは鎌倉時代と言われており、浄土宗や浄土真宗などの宗派の普及にともなって、全国的に火葬が広まっていったと伝えられています。
しばらくは土葬と火葬の2つの方法がとられていましたが、昭和時代になると衛生面や墓地のスペースの確保が困難になってきた理由から、火葬が主流になったのです。
土葬には許可が必要
現代日本では火葬が9割以上を占めており、亡くなった方のご遺体は火葬してお骨をそれぞれの方法で埋葬や管理することが一般的です。
そのため、土葬自体が無理だと考える方もいらっしゃるのではないでしょうか?結論をご紹介しますと、法律上土葬をすることそのものは可能です。
ただし、土葬自体は許されていても、その土地や霊園などの許可がなければ土葬はできません。土葬は日本の墓地と埋葬に関する法律にて、埋葬はご遺体を土の中に葬ることだと明記されています。
ご遺体を埋葬、焼骨を埋蔵する施設が墓地(墳墓)のことであると定義されているため、必ずしも火葬をしなくともご遺体を埋葬することが可能なのです。
しかし、条例によって土葬自体を禁止している区域が多く、現状では土葬ができる場所を探すことは非常に困難と言えます。
特に東京23区などでは土葬そのものを禁止している区が多いのです。墓地、埋葬等に関する法律により、墓地管理者の許可、敷く村長の許可が必要であるため、火葬だけでなく土葬の際も「土葬許可証」が必要になります。
近年は衛生上の理由から土葬ができない
近年、土葬がむずかしくなっている理由は、衛生的観点から見た際にリスクがあることも深く関係しています。
土葬されたご遺体はやがて腐敗して、周囲の土などの環境衛生に影響を及ぼしてしまう危険性があります。
周囲に影響を及ぼさないように、2m以上の深い穴を掘る必要もあり、重機の手配をしたり墓地を探したりと、土葬ならではの手続きや作業が発生します。それゆえ、現代では土葬をすることは火葬と比較して敷居が高いものになっているのです。
一部地域で土葬ができる霊園がある
日本で土葬をするには、ごく限られたエリアになります。
土葬に必要なスペースがあり、墓地管理者が許可している墓地、霊園もあるため、土葬を希望される方はあらかじめ調べてみてはいかがでしょうか。
特に山梨県や茨城県では一部地域で土葬の文化があり、一部の墓地や霊園で土葬が可能です。
また、土葬が可能な場所を探す方法として「土葬の会」に相談する手段もあります。宗教や人種問わず、土葬を希望される方のために、墓地の使用許可申請のサポートや、墓地や霊園の紹介をしているため、相談してみてはいかがでしょうか。
土葬のメリット
土葬をするメリットは下記のように複数のポイントがあります。
- 故人のそのままの姿で埋葬できる
- 直接土に還すことができる
- 火葬が禁忌とされる宗教の教義を守れる
土葬を希望される方の多くは、そのまま生き物として自然に土へと還っていきたいという願いを持っています。古来からの考えに沿って、大地に還りたいという生前の願いを叶えるための方法として、土葬を願う方は今もいます。
また、キリスト教やイスラム教は火葬が禁忌とされており、日本在住の方でも土葬を希望するケースが多くあります。一部地域でも土葬が行える場所が残っていることで、宗教の教義を守った埋葬方法を叶えられるのです。
ただし、土葬をする際には土地探しだけでなく、専用の穴を深く掘る必要があります。ショベルカーなどの重機を用いることが多いですが、重機を入れるスペースがない場所であればご遺族が許可されている深さまで穴を掘る必要があります。
火葬費用はかからないものの、重機を用いる場合は工事費用なども必要になります。そのため数十万~数百万円の費用がかかり、火葬よりも高額になる傾向にあります。
土葬を希望される方はご遺族の負担を減らすため、あらかじめ埋葬費用を準備したり、墓地を探したりといった終活を進めておくことをおすすめします。
まとめ
土葬は日本でも長い間行われてきた埋葬方法です。
日本は土地が狭く、現在では墓地の場所の確保が困難である点や、衛生上の問題から現在はほとんどが火葬です。
しかし、一部の霊園では土葬を受け付けているところもまだあり、絶対に土葬ができない環境ではありません。
宗教上の理由や、土葬を希望しているけれど近くに許可されている墓地がないといった方は、土葬の会に相談してみましょう。
投稿者プロフィール

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一般社団法人 包括あんしん協会代表理事
株式会社 WishLane 代表取締役
【資格】
終活アドバイザー
CFP®(ファイナンシャルプランナー)
デジタル遺品アドバイザー®
高齢者住まいアドバイザー
家族に恵まれなかった幼少時代の不安と孤独を突破し、今は3世代同居でにぎやかに生活中。
一生涯のライフプランをサポートする中、独りで誰にも看取られず亡くなる顧客を何人か見送った時、幼少の頃の孤独と重なり「孤独で苦しむ人を減らしたい」と思ったのがきっかけで、おひとり様サポートを行う「一般社団法人包括あんしん協会」を設立。
5000人の保険コンサルティングの実務経験から、保険の「資金準備」だけでは足りないと実感。「お金」「心・身体」「人」のトータルサポートを目指している。実際におひとり様が病気や介護になった時、また死亡時のサポート業務を行なっている。おひとり様の終活準備の必要性を啓もうする為セミナー講師としても活躍中。
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