2020年3月29日に、志村けんさんが新型コロナウイルス感染で逝去されました。物心ついた頃から、「8時だョ!全員集合」や「バカ殿様」などのテレビ番組で、何十年も楽しませてもらっていた視聴者としてとてもショックなニュースでした。
そして、志村けんさんのご遺族の方が「病院の対面も出来ず、火葬への立合いも骨も拾えなく最後のお別れが出来なかった」と、無念の思いを話されていた姿も印象的です。
ニュースにより、新型コロナウイルスで亡くなると遺族が対面できない現状を知り、衝撃を受けた方も多かったのではないでしょうか。
この報道をきっかけに、「もしも家族が新型コロナウイルス感染で亡くなった場合、お別れはどうしたらいいのか?」と、不安に思う方々からの問い合わせが増えました。
皆様の不安に対して、現状での新型コロナウイルスで亡くなった方の葬儀や火葬の対応をご紹介します。そして、亡くなられた方とご遺族がしっかりとお別れの時間を作る方法はあるのか、ご説明します。
新型コロナウイルスで亡くなった場合の対応
新型コロナウイルス感染症でお亡くなりになった場合、ご遺体をお預かりできる専門の葬儀社が対応します。対策環境が整っていない葬儀社は、ご遺体を引き受けていません。
直接的なケアを行うスタッフは、防護具〔サージカルマスク、手袋、長袖ガウン、目の防護具(フェイスシールド又はゴーグル)〕を着用します。そして、ご遺体を納体袋で密封して直接火葬場に運びます。亡くなったあと直接ご遺族と会うことなく、そのまま火葬されます。
また、地域によっては火葬後、遺族による拾骨も許可されていません。このような現状から、病院での面会だけでなく、最期のお別れも出来なかった事に、ご遺族は後々まで辛く苦しい気持ちを抱えてしまっています。
亡くなった後の遺体から感染しないの?
遺体から新型コロナウイルス感染を発症するリスクは、厚生労働省のガイドラインが発表しています。それによると、「遺体においては、呼吸や咳により飛沫感染のおそれはないのが、接触感染に対しての注意が必要」とのこと。
ご遺体からの接触感染を避けるため、基本的に直接触れることは出来ません。
- 高齢者
- 基礎疾患(糖尿病・心不全・COPD等の呼吸器疾患)がある方
- 人工透析を受けている方
- 免疫抑制剤・抗がん剤等を服用している方
- 妊娠中の方
特に上記のような重症化のリスクがある方は、感染しないよう十分な注意が必要とされています。
基本的には遺体への直接接触は出来ない
遺体は感染管理の観点から、非透過性納体袋に収容することが推奨されています。
非透過性とは、「液体が浸透しない」特殊な構造の袋で感染予防に役立ちます。通常は中の様子が見えないよう、色つきの袋が使われていますが、お顔の部分だけ透明になっている非透過性納体袋もあります。
透明な部分があっても感染対策上の支障はありません。しかし現状では、たとえ非透過性納体袋に収容していても、火葬前に遺族が集まって送り出すことは感染リスクがあるとして実現は難しい状況が続いています。
東京都内の火葬場は拾骨出来ない
ウイルスは火の高温にさらされると失活して感染力を失います。ですので遺骨から感染することはなく、拾骨時の遺骨に対する感染対策も必要ないとされています。
だからこそ濃厚接触者同士ができるだけ接触しないで、拾骨できる場を用意していただきたいところですが、今現在(2021年6月)東京都内の火葬場では密を防ぐためご遺族による拾骨はできません。
拾骨を希望される方は、ほかの都道府県で火葬する方法があります。火葬場は住所地や亡くなった場所でなければいけない決まりはありません。都内在住の場合、隣県などで拾骨が可能な火葬場を探してみてはいかがでしょうか。
新型コロナウイルス感染症は24 時間以内に火葬が必要?
新型コロナウイルス感染症により亡くなられた方、及びその疑いがある方の遺体は、24時間以内に火葬できると、「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」で定められています。
しかし、24時間以内に火葬は必須ではありません。ほかの都道府県で火葬し、拾骨を希望される場合は、火葬場を探す時間をある程度確保できます。
「3 一類感染症、二類感染症、三類感染症又は新型インフルエンザ等感染症の病原体に汚染され、又は汚染された疑いがある死体は、二十四時間以内に火葬し、又は埋葬することができる。」
新型コロナウイルス感染症で亡くなった方とお別れが出来る葬儀とは?
現状では、ご遺体と対面できず火葬後も都内は拾骨すらできないとお伝えしてきました。満足にお別れが出来ず、無念の思いを抱えているご遺族がいらっしゃいます。
そこで、何とか遺族の方の悲しみと苦しみを軽減して、寄り添える方法を調べたところ、ご遺体をご自宅へ帰して、お顔を見て、触れて最期のお別れが出来る方法を見つけましたのでご紹介しますね。
基本的には、新型コロナウイルス感染症で亡くなった場合次の事が出来ません。
- お顔を見られない
- 遺体に接触できない
- 清め化粧が出来ない
- 好きだった洋服を着せてあげられない
- 故人と一緒に過ごす通夜が出来ない
- お棺の中に好きだったものを入れてあげられない
- 拾骨が出来ない
しかし、ある事をするとこれら全て行う事が可能となります。
ある事とは、「エンバーミング」という施術。日本ではあまり知られていませんが、遺体を衛生的に防腐、殺菌、保存、修復を行う特殊な施術です。
アメリカでは感染症を防ぐ方法として尊重されており、ゆっくりと故人とのお別れの時間をとることも、葬儀の日程を決めることも、ご遺体に触れてお見送るすることも可能です。
この施術が行えるエンバーマーが日本ではまだ多くありません。しかし、希望すればエンバーミングによって、ゆっくりとお別れの時間を作ることが可能です。
衛生的で安全
エンバーミングは専門技術を有するエンバーマーが、ご遺体の血液や体液を排出し保全の為の薬液を注入します。今回のようなウイルス感染したご遺体を、エンバーミングを行う事で接触感染を防げるのです。
殺菌、防腐されているので、遺体に触れて話しかけるという従来の葬儀のお別れも出来ます。
常温で2~4週間の長期保存が可能
エンバーミングはご遺体を防腐、殺菌処理しているため、常温で2~4週間の長期保存が可能です。家族内で新型コロナウイルス感染濃厚接触者がおり、すぐに葬儀を行えない場合や、感染者が陰性になるまで葬儀や火葬を行わずご遺体を保存出来ます。
数週間のお別れの期間をとることができるうえ、一度自宅に帰してあげたいという希望も叶えられます。また海外や遠方からお別れに来る人を待つことも可能です。
遺体の修復や化粧も出来ます。
エンバーミングは闘病による、やつれやお顔の変形を修復する技術です。元気だった頃のお顔に近づけるような修復も可能です。
また、防腐、殺菌によってご遺体に触れられるため、清め化粧を施せることもエンバーミングのメリットです。ご遺体に好きな衣装を着せてあげたり、メイクを施したりと美しいお姿で送り出すことができますよ。
おわりに
このようにエンバーミングは、新型コロナウイルス感染症でお亡くなりになった方の葬儀やお別れができる技術が存在します。
包括あんしん協会では、新型コロナウイルス感染症で亡くなられた方のご葬儀について、相談もお受けしています。また、地域は限られますが、エンバーミングを行っている専門家のご紹介も可能ですのでご相談ください。
投稿者プロフィール
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一般社団法人 包括あんしん協会代表理事
株式会社 WishLane 代表取締役
【資格】
終活アドバイザー
CFP®(ファイナンシャルプランナー)
デジタル遺品アドバイザー®
高齢者住まいアドバイザー
家族に恵まれなかった幼少時代の不安と孤独を突破し、今は3世代同居でにぎやかに生活中。
一生涯のライフプランをサポートする中、独りで誰にも看取られず亡くなる顧客を何人か見送った時、幼少の頃の孤独と重なり「孤独で苦しむ人を減らしたい」と思ったのがきっかけで、おひとり様サポートを行う「一般社団法人包括あんしん協会」を設立。
5000人の保険コンサルティングの実務経験から、保険の「資金準備」だけでは足りないと実感。「お金」「心・身体」「人」のトータルサポートを目指している。実際におひとり様が病気や介護になった時、また死亡時のサポート業務を行なっている。おひとり様の終活準備の必要性を啓もうする為セミナー講師としても活躍中。
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