長寿とは、働く時間が延びること
包括あんしん協会のコラムでは、お墓問題、エンディングノートの作り方、食べ物、ペットのお世話問題など、「50代からの終活」を共通テーマに、シニアライフへ徐々に移行する50代から考えておきたい関心事についてご紹介してきました。
「終活」の名前のとおり、人生の終わりに向けて身の回りのモノ・コトを整理整頓し、不要なものを手放して旅立つ支度に取り掛かる、終活の時間。しかし、今まで持っていたモノ・コトを手放すこと、畳む準備をすることだけが終活ではありません。自分が理想とするシニアライフを実現するため、新たに仕事・働き方を獲得することもまた、今の時代にあった終活の形の一つです。
仕事、職探しが続くのが、現代のシニアライフ
シニアライフのキャリア論をテーマに扱う今回のコラムでは、シニアライフアドバイザーの松本すみ子さんが執筆された著書「定年後も働きたい 人生100年時代の仕事の考え方と見つけ方」を参考にしています。
そして、こちらの本のなかでは、数年前にベストセラーを記録し、世間の価値観を一変させた本「LIFE SHIFT100年時代の人生戦略」から、このような質問に関するエピソードが紹介されています。
「100歳まで生きるとして、現役時代に毎年所得の10%を貯蓄し、引退後は最終所得の50%相当の資金で暮らしたいと考えたら、あなたは何歳で引退できるか?」
なんと、答えは「80代」でした。(中略)長寿とは、喜ばしいだけでなく、生きるためのお金が不可欠だということを思い知らされたのです。
時の話題となったLIFE SHIFTの本を読まれた方のなかには、100年時代の生き方を考える上での問いかけとして、印象に残っている方もいるのではないでしょうか。そして、シニアライフアドバイザーの松本すみ子さんも、この事実に対して「長寿とは、老いて何もしない時間が長くなることではなく、社会のために生きる時間が長くなることだ」と総括しています。
会社員の「定年」の年齢は時代と共に徐々に延びていることに加えて、再雇用の形で定年の65歳以降も働きながらシニアライフを送るような流れは、今後も加速することでしょう。
今回のコラムでは、定年後すなわち65歳以降もライフスタイルにあった仕事に出会うための知識として、「55歳からのハローワーク活用術」について、参考にした本の内容を交えながら、ご紹介したいと思います。
シニア世代を対象にした「生涯現役支援窓口」
シニア向け窓口の特徴
公共職業安定所、通称「ハローワーク」では、2018年に全国の主要ハローワーク180箇所に「生涯現役支援窓口」が設置されました。厚生労働省の方針を受け、都道府県労働局が地位位の雇用対策を行うための窓口であるハローワークですが、そのうち前述の「生涯現役支援窓口」では、特に65歳以上の再就職支援に力を入れて対応しています。
そして、ハローワークの一般窓口との大きな違いは、やはり「就労支援する対象者の年代」です。通常の窓口を経由した場合、シニアの就職率が平均17%程度だったことに比べて、シニア世代を対象に開設された生涯現役支援窓口のシニアの就職率は61%。
シニア専門窓口を通しても、人気が高い事務職や経営管理職のような仕事を探す人には難しい状況が続くようですが、清掃業務、駐車監視員、施設管理者のような職種を中心に、生涯現役支援窓口では、65歳以上を対象にした求人情報を比較的に探しやすい環境づくりが進められています。
55歳からのハローワーク活用術
キャリアコンサルタントに相談しよう
ハローワークの存在は知りつつ、この窓口で仕事探しに取り組んだ経験がある方ばかりではないでしょう。求人情報が集まるハローワークですが、参考書籍の著者は「求人情報を探しにいくだけでは、あまり意味がありません」と語ります。なぜなら、正直なところ多くの人が希望するような求人は、広く案内されている求人情報ではなかなか見つからないからというもの。そこで、ハローワークを通じて、無料のキャリアコンサルタントから指導を受けることをお勧めされています。
ハローワークに所属するキャリアコンサルタントは、
・今までに培った職業経験の棚卸し
・相手の強みを分析して、積極的に求職活動へ臨めるようなアドバイス
・履歴書や職務経歴書の書き方や面談の受け方
・求職活動の方法や求人検索のサポート
など、「コンサルタント」の役職の通り、求職者の状況に応じて、求職にまつわる全般の悩みや課題に応対してくれる、相談相手になってもらえます。単独で自分にあった求人情報を探す前に、キャリアの専門家に相談し、メンターになってもらえるような関係を築きながら次の仕事を探すきっかけとして、キャリアコンサルタントの力を借りてみることを選択肢の一つとして、頭の片隅に置いておいてくださいね。
シルバー人材センターとの住み分け
さて、シニア世代の職探しと聞くと「シルバー人材センターと何が違うの?」と疑問に思われるかもしれません。シルバー人材センターは全国に約1300の組織があり、71万人の会員を持つ巨大組織。組織の設置件数で見ると、はるかにハローワークを上回っているようです。
ここでシニア世代を対象にしたハローワークの窓口とどのように性質が違うのか、押さえておきましょう。
この違いは、シルバー人材センターの設立経緯を見ると明らかです。
そもそもシルバー人材センターは昭和50年代に「生きがい就労を軸とした短期的な軽作業の請負い」を目的に発足した組織です。この性質を残して運営されているため、現代においてもシルバー人材センターは短期的、簡易的な仕事の斡旋を得意としているのです。よって、収入を得るために本格的に就労するような求人情報は、シルバー人材センターにはほとんどないことを”ハローワークとシルバー人材センターの違い”として認識しておくと分かりやすいでしょう。
シルバー人材センターの会員さんが受け取る収入の月額平均は3〜4万円ほど。「生活を支えるほどの仕事は必要ないが、週に数日程度働いて、社会とのつながりを持って生きがいを得たい」という方には、ハローワークよりもシルバー人材センターがお勧めというわけです。
コンサルティングを受けつつ求人サイトをチェック
シニア世代の就労支援に詳しいシニアライフアドバイザーの松本すみ子さんいわく「はっきりいって、仕事の種類と数、多様性は、ハローワークなどの公的機関よりも、民間の求人サイトの方に分があります」と述べています。この辺りについても、読者のみなさんの想像通りではないでしょうか?
シニア活用ドットコム、フルキャストシニアワークス、シニア求人ナビ、マイナビミドルシニア、シニアジョブなど、「シニア 求人 求職」のワードで検索すると、たくさんのシニア向け求人サイトが出てきます。他にも「高齢社」のようなシニア向け派遣に登録することも、仕事を獲得するための方法の一つです。また、定年前後に再就職した60代を対象に行った調査では、「知人・友人に紹介してもらった」という縁故採用のケースが、再就職先の探し方として最も多い傾向にあったという結果も明らかになっています。
「今まで築いてきたキャリアを活かせず、年齢を理由にゼロからのやり直しになるのだろうか」と、時にはすぐに理想の仕事が見つからずネガティヴな気持ちになる場面もあるかもしれません。ハローワークの扉を叩いて、キャリアコンサルタントに話を聞いてもらって、メンターとして精神面で頼りながら、情報収集に関しては民間の求人サイトや知人友人の紹介も活かして再就職の職探しに取り組んでいく・・・ 今までハローワークのサービスと縁がなかった方も、再就職の仕事探しをきっかけに、ハローワークや国の支援事業など公的なサービスについてもアンテナを張って、情報収集してみてくださいね。
投稿者プロフィール
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一般社団法人 包括あんしん協会代表理事
株式会社 WishLane 代表取締役
【資格】
終活アドバイザー
CFP®(ファイナンシャルプランナー)
デジタル遺品アドバイザー®
高齢者住まいアドバイザー
家族に恵まれなかった幼少時代の不安と孤独を突破し、今は3世代同居でにぎやかに生活中。
一生涯のライフプランをサポートする中、独りで誰にも看取られず亡くなる顧客を何人か見送った時、幼少の頃の孤独と重なり「孤独で苦しむ人を減らしたい」と思ったのがきっかけで、おひとり様サポートを行う「一般社団法人包括あんしん協会」を設立。
5000人の保険コンサルティングの実務経験から、保険の「資金準備」だけでは足りないと実感。「お金」「心・身体」「人」のトータルサポートを目指している。実際におひとり様が病気や介護になった時、また死亡時のサポート業務を行なっている。おひとり様の終活準備の必要性を啓もうする為セミナー講師としても活躍中。
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