今回ご紹介するのは「相続争いは、資産がある家庭のトラブル。預貯金の金額も多額ではないし、身内が少ない自分には心配ない問題だから大丈夫」とお考えの方に、ぜひ読んでいただきたい内容です。
なぜなら、裁判所に持ち込まれる相続トラブルのうち、約3割は”相続財産額1000万円以下”で発生している事実があるため。「普通の年金暮らし家庭だから」「おひとりさまで、資産も身内も少ないから」とお考えの方にとっても、相続トラブルの対策は無縁ではないテーマということをお伝えしたいところです。
相続される財産は預貯金・現金に限らず
相続の対象として思い浮かぶ対象は、まず銀行の預貯金。次にタンス貯金の現金や、不動産としての土地や建物といったところでしょうか。このように多くの方が相続対象としてすぐに連想する資産のほかに、下記のような財産も相続の対象として含まれています。
相続の対象となる財産の一例
預貯金、土地建物(借地権含む)
不動産などの抵当権
自動車やバイク
家電家具、美術品や貴金属・骨董品など
個人事業用の財産(売掛債権や農機具など)
有価証券(株や国債)、知的財産権(商標権や著作権など)
慰謝料請求権などの債権
ゴルフやリゾートの会員権
生命保険、死亡退職金
仏壇や墓所
このように相続の対象となる財産のうち、仏壇や墓所以外の項目には、原則として課税が発生する仕組みとなっています(生命保険や死亡退職金には控除あり)。
ペーパーレス化と相続の盲点
上記のように「相続の対象となる財産」は、預貯金や現金の他にも意外と多く存在しており、「どこに、どんな無形・有形の財産があるか」を漏れなく遺族に伝えられる状況を整えることは容易ではありません。
さらに近年のペーパーレス化の普及によって、預金通帳や証券を手元に保管していないケースも増えています。例えば、金融機関の口座に電子化して保管されているような上場企業の株式は、保有していることを遺族に伝えるための工夫を要するところでしょう。
・気づきにくい財産について、存在を伝える記録を残すこと
・財産の存在にアクセスするログイン情報を記しておくこと
このような対策を講じておくことで、残された身内が想定外の相続トラブルに発展する事態を避けられます。
安全な方法で資産の洗い出しを
変化する日常のなかで自分が保有している財産を全て洗い出すのは、確かに面倒な作業です。しかし、保険や株の証券について存在を伝えないまま持ち主が死去してしまうと、思わぬ相続トラブルを招く原因にもなりかねません。
存在を伝えやすい預貯金や不動産の相続を考えると同時に、存在に気づかれにくい財産があるかどうか、資産の洗い出しを実施しておきましょう。どこにどんな資産を保有しているか、連絡先情報と共にリストアップすることをオススメします。
自分の資産を把握することは、リタイア後の生活の計画を立てるにあたっても有意義な機会です。「現金化して、シニアライフの生活費に充てられる資産」「身内に相続する資産」としてどんな存在があるのか、把握する時間を設けてみてくださいね。
但し、お伝えするまでもありませんが、資産情報の管理は慎重に。WEB上でアクセスするようなログイン情報は、例えばIDとパスワードを別の場所に記しておくなど、うっかり第三者の目に触れた場合でも個人情報が流出しない慎重な管理は欠かせません。
もしも財産の棚卸しが分からない、自分だけで取り組む時間やきっかけがないという方は、ファイナンシャルプランナー等の専門家に相談されると良いでしょう。「資産家じゃないから、相続トラブルとは無縁」とお考えの方も、シニアライフの安心のため、死後に遺族のトラブルを回避するために、ご自身が持っている目に見えにくい資産の整理に取り組んでみてくださいね。
投稿者プロフィール
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一般社団法人 包括あんしん協会代表理事
株式会社 WishLane 代表取締役
【資格】
終活アドバイザー
CFP®(ファイナンシャルプランナー)
デジタル遺品アドバイザー®
高齢者住まいアドバイザー
家族に恵まれなかった幼少時代の不安と孤独を突破し、今は3世代同居でにぎやかに生活中。
一生涯のライフプランをサポートする中、独りで誰にも看取られず亡くなる顧客を何人か見送った時、幼少の頃の孤独と重なり「孤独で苦しむ人を減らしたい」と思ったのがきっかけで、おひとり様サポートを行う「一般社団法人包括あんしん協会」を設立。
5000人の保険コンサルティングの実務経験から、保険の「資金準備」だけでは足りないと実感。「お金」「心・身体」「人」のトータルサポートを目指している。実際におひとり様が病気や介護になった時、また死亡時のサポート業務を行なっている。おひとり様の終活準備の必要性を啓もうする為セミナー講師としても活躍中。
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