人生100年時代と言われる昨今、シニアライフのための備えはどなたにとっても避けて通れないテーマです。特に、寿命が高まる中で「単に寿命を延ばすのではなく、健康寿命を延ばしたい」とお考えの方も多いのではないでしょうか。
健康寿命とは、一般的に「心身ともに自立して、健康的に生活ができる期間」のことを表します。2018年に発表された調査結果によると、平均寿命と健康寿命については、現在このような結果が報告されています(厚生労働省による調査報告)
男性:平均寿命80.21歳 健康寿命71.19歳
女性:平均寿命86.61歳 健康寿命74.21歳
現状ではこのような統計結果が報告されています。このような現状の平均値を知りつつ、生活習慣による影響を受けやすい健康寿命だからこそ、理想のシニアライフのための習慣を早めに取り入れていきたいものですね。
おひとりさまシニアライフこそ趣味を重視したい理由
本コラムでは「おひとりさまシニアライフ」のための終活を度々テーマとして取り上げています。兼ねてより本コラムのシリーズでもご紹介している通り、近年の厚生労働省による調査では、国内で58%の世帯、つまり過半数がの世帯が「高齢者のみ」あるいは「高齢者の一人暮らし」で生活を送っている状況が報告されています。このような傾向を知ると、現在は同居人がいる方にとっても、おひとり様で老後を迎える可能性を無視しておけません。
続いて、この終活コラムで取り上げる「おひとりさまシニアライフと趣味の関係」について注目してみましょう。大前提として、家族がいる・いないに関わらず、人生を充実させてくれる趣味は無いよりもあった方が良いと考える方が多いことでしょう。それでは、さらに「おひとりさまシニアライフ」だからこそ趣味の存在が重視される理由について、一歩踏み込んで考えてみましょう。
1)自分自身の変化に気づいてもらいやすい
特にシニア世代の体調の変化は、本人の自覚よりも先に家族が気づいて、適切な治療や対処に向かう手助けを行うことがしばしばあります。一方で、おひとりさまで老後を迎えた場合は生活空間の中で、本人の変化を客観視してくれる存在がありません。このような場合において、もちろんご近所付きあいが本人の変化へ気づいてケアしてもらえるような関係性もありますが、近所づきあいが希薄となった都市部では、これも難しい選択肢かと思います。
このように、おひとりさまの老後と交流の場を考えた時、特定の趣味があると、同じ趣味を持つ人同士での繋がりが生まれます。同居の家族がおらず、自分一人では自覚や行動がしにくい状況でも、趣味をきっかけに顔馴染みとなった方から「〇〇さん、しばらく集まりに来ないけど、どうしたんだろう」「最近少し顔色が悪いように見えるけれど、大丈夫だろうか」と気づいて、指摘してもらうことで病院へ行ったり、誰かの手を借りる背中を押されたりできるものです。
2)日々の健康習慣への意識が高まる
何よりも趣味の存在は、日々の生活に「やりがい」をもたらします。
やりたいこと、夢中に慣れる趣味が見つかれば、それは大前提として心身の健康があるから続けられるという事実を誰もが実感します。だからこそ、趣味を健康な身体で続けられる健康寿命を伸ばしたいと積極的な気持ちを生み出す源泉となるのです。
また、同世代が集まる趣味の場へ足を運べば、世代的にも必然的に健康への話題が浮かんでくることでしょう。「私は毎日ウォーキングをしている」「山登りへ行ってきた」「食事を少し変えてみた」など健康意識の高いコミュニティへ属すれば、自分の生活にも取り入れてみようと意識が芽生えるものです。誰からも促されないまま自分自身の生活を律するのが難しい環境であっても、趣味で生まれた交流から健康習慣を見直したというシニア世代も多くいらっしゃいます。
おひとりさまシニアライフだからこそ趣味を重視したい理由について、ご理解いただけたでしょうか? それではここからは、おひとりさまシニアライフの中で人気を集めるさまざまな趣味について、各回のコラムで内容別にご紹介いたします。
「筋トレ と トレーニングジム」が人気の理由
1)体力づくりに繋がる
東京消防庁による調査では、高齢者の救急搬送における原因の約8割が転倒による事故という結果が報告されています(平成25〜29年の合計値)。転倒しそうになった時、咄嗟にバランスを取り戻す筋力や反射神経が年齢と共に衰えてくるため、転倒した時の怪我の程度がどうしても重くなってしまう恐れがあるようです。
転倒によって骨折したことで暫く入院・安静生活となると、それをきっかけに筋力が一気に衰えて寝たきり生活へ突入してしまうケースも少なくありません。
このような悪循環のリスクを軽減するためにも、日頃からトレーニングによって筋力を鍛え、体力をつけておくことは大きな効果を発揮します。
筋トレというと思い器具を持ち上げたり、歯を食いしばって行うハードなトレーニングを想像されるかもしれません。しかし、一日5分だけでも浅いスクワットやウォーキングなど身体を動かすだけでも体力づくりの効果は期待できるものです。
健康なシニアライフは、まず健脚から。行きたい場所を訪ねたり、自分で身の回りの仕事を行える自立的な生活を叶えるためにも、無形財産としての体力を蓄えるために、シニアライフから筋トレやジム通いが人気の趣味・習慣として注目されています。
2)社交の場へ出られる
プロのアドバイスを受けつつ身体を鍛えたい気持ちはあるけれど、活発な若者が集うジムの門戸を叩くのは気が引ける・・・と思う方も、ご安心ください。健康寿命を増進させることは社会的に大きな注目が集まるテーマであり、最近では「シニア世代向け」を施設の特徴として掲げるトレーニングジムも増えています。このようなジムでは、若者向けのハードなトレーニングではなく、シニア世代が健脚・健康を維持することを目的としたメニューが提供されています。もちろん多世代が通うジムであっても、老若男女が自分のペースで身体を鍛える施設もたくさんございます。習慣として毎日通う人同士で挨拶をしたり、雑談したり、「身体を鍛えること」を目的に集まったさまざまな人の社交の場としても人気を集めています。
3)認知症の防止へ繋がる
適度な運動がもたらすものは、身体的な体力面での効果に留まりません。脳科学の分野では、運動がもたらす脳神経への作用に関する研究が日々更新されています。この研究によっても「適度な運動が脳神経の機能を改善し、認知症の予防へ寄与すること」が明らかとされています。運動することで血流が良くなると、脳にも多くの血液が送られ、酸素や栄養が脳まで運ばれる流れを作るのです。実際に医療機関や介護施設でも「運動療法」という名目で認知症の予防や改善を促すメニューが組み込まれています。
特に認知症の予防や改善として運動を取り入れる場合、2つ以上のことを同時に行う「マルチタスク」を意図的に組み込んで、頭と身体を同時に促すトレーニングを行うようです。たった10分間の軽い運動でも、「脳の機能を改善すること」に対する効果が認められており、認知症の予防としても身体を動かすトレーニングの分野は大きな注目を集めています。
運動を始める際の注意点
申し上げるまでもありませんが、やはりシニア世代がトレーニングを行う場合は、年齢に応じた身体への配慮が欠かせません。ここでは「ゆっくりの動き」がキーワードであるとお考えください。激しく俊敏な動きを求めるトレーニングに比較して、ゆっくりな運動は瞬発的な怪我のリスクが下がります。
また、激しい運動は目に見える怪我のみならず心臓や血管への急激な負荷を掛けることで高血圧症や心疾患のリスクが高めてしまう点にも注意しましょう。対してゆっくりな運動は、身体への急激な負担を避けられる上に、必要な筋肉を確実に鍛えられる利点があります。もちろん、ゆっくりな運動であっても過度な回数を行うと関節などへ負荷が掛かりすぎて怪我に繋がる恐れもありますので、無理しないペースと回数で行いましょう。心配な場合は、トレーナーに付いてもらえるトレーニングジムへ通うことをおすすめします。
身体づくりは食事面と共に
さらに、ご存知の通り健康のための身体づくりには、食事面からのアプローチも欠かせません。年齢と共に歯茎や歯の状態が弱って、若年層と比べるとどうしても噛む力が弱まってしまいます。すると「食べる」という行動そのものや、食事を買ったり作ったりする調達が負担になっていき、ささっと食べられるものを少しだけ食べる。そんな生活の方が便利で楽だと思ってしまう気持ちは十分に想像できるものです。実際にシニア世代が低栄養をきっかけに健康を損なうケースも十分に認められていて、医療や介護の従事者の懸念事項の一つとして挙げられています。
面倒と感じても、身体が動ける間は重い腰を上げてでも、栄養に富んだ食事を選ぶ行動を続けましょう。作ることが難しければ、惣菜を買ったり宅配サービスを利用しても構いません。低栄養の状態が続くと、さらに動くことが難しくなって、悪循環に足を踏み入れてしまうからです。
身体づくりの視点から見ると、特にタンパク質とカルシウム、鉄の摂取を心がけましょう。卵や牛乳、ヨーグルトなどの食材は主に骨を強くする栄養を与えます。豚肉や魚、納豆などの食材は血や肉のもとになるため、筋力を鍛えるトレーニングと併せて摂取したい食材です。エネルギーとタンパク質が不足した身体では、せっかく摂取したミネラルが働かない事態を招いてしまいます。
若い頃と比べて食欲の衰えを感じていたとしても、特に不足しがちなタンパク質は意識的に摂取しましょう。トレーニングで徐々に体力面での変化を実感すると「もっと効果をあげたい」と食事面にも配慮する好循環も期待できますね。
快適なシニアライフは健脚から
繰り返しますが、どの世代に限らず、自分の理想の生活を維持するためには第一に健康が欠かせません。そして、さらに年齢と共に足腰の筋力が衰えやすいため、若い世代と比較すると、より意識的なトレーニングが求められるということです。行きたい場所へ行ったり、やりたいことをする。そんな快適なシニアライフは健脚から。老後から全く新しい行動を移すのは大変・・・と思われた方は、今日から3分間でも良いのでトレーニングを始めましょう。たった数分の習慣でも、続けることで「体力・健康」という無形財産として理想のシニアライフを下支えしてくれることでしょう。
おひとりさまこそ、社会との接点を持ち続けられる趣味づくりを!
前述の通り、社会の中の一員として交流を持ち、役割を持つことは、生きがいに直結します。同居の家族がいない場合、家の中での話し相手がいなかったり、家族ぐるみでの付き合いと縁遠くなる可能性が考えられますが、これ自体が悪いことでは決してありません。
ただし、ご自身の変化に気づいて教えてくれたり、心配し合って、時に支え合えるような人との繋がりは生涯持ち続けていたいものです。職業人としての現役時代は、仕事が社会との繋がりとして機能していたのかもしれませんが、シニアライフでは、趣味をきっかけに意識的に社会との繋がりの場を用意していきましょう。
この終活コラムでご紹介する中で、興味のありそうな趣味はありましたか?
「実際に老後になってから」と先延ばしせずとも、まずは週末だけ、一日30分だけでも新しい趣味と習慣を取り入れてみてくださいね。
投稿者プロフィール

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一般社団法人 包括あんしん協会代表理事
株式会社 WishLane 代表取締役
【資格】
終活アドバイザー
CFP®(ファイナンシャルプランナー)
デジタル遺品アドバイザー®
高齢者住まいアドバイザー
家族に恵まれなかった幼少時代の不安と孤独を突破し、今は3世代同居でにぎやかに生活中。
一生涯のライフプランをサポートする中、独りで誰にも看取られず亡くなる顧客を何人か見送った時、幼少の頃の孤独と重なり「孤独で苦しむ人を減らしたい」と思ったのがきっかけで、おひとり様サポートを行う「一般社団法人包括あんしん協会」を設立。
5000人の保険コンサルティングの実務経験から、保険の「資金準備」だけでは足りないと実感。「お金」「心・身体」「人」のトータルサポートを目指している。実際におひとり様が病気や介護になった時、また死亡時のサポート業務を行なっている。おひとり様の終活準備の必要性を啓もうする為セミナー講師としても活躍中。
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